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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)252号 判決 1954年3月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士今井豊治の上告理由第一点について。

論旨は本件手形の満期日に支払場所において被上告人に金八万円の支払をしたのは上告人ではなく上告人の東京事務所の所員秋武藤衛であると主張する。しかし原判決挙示の証拠によれば上告人が右の支払をしたことを認定できるのであるからこの点に関する所論は事実認定の非難に帰する。そして原判決の認定した事実によると被上告人が本件手形の所持人であつて真の債権者であることを上告人において知つており、所持人たる被上告人が満期当日支払場所において振出人たる上告人から内金八万円の支払を受け、手形金残額については見返りとして訴外人振出の手形を受取つたというのであるから本件手形については当事者間に手形の呈示があつたと同一の効力を生じたものと認めるのが相当である。従つて原判決がこれにより上告人に遅滞の責任を認めたことは正当であり論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は事実認定の非難に帰し上告適法の理由とならない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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